▼この事例の結論・要点

◆VketCloud導入の動機

・時代背景にあった新しい供養の形をメタバースで実現

・アプリレスで誰でも簡単にアクセスできる空間の構築

◆取り組み

・メタバース空間での供養を可能にした『メタバース霊園　風の霊』を、Vket Cloudを用いて開発・制作・提供

◆効果

・日本で初めてのサービスをローンチし、ユーザーに届けることができた

・墓じまい等の社会的課題が取り立たされる最中のローンチで、多数のメディア露出を獲得

『メタバース霊園風の霊』をVket Cloudにて開発・提供

　冠婚・葬祭・互助会を柱とした総合結婚式場・葬斎センター・多目的ホールを展開するアルファクラブ武蔵野株式会社（以下、アルファクラブ武蔵野）は、コロナ禍に、葬儀をインターネットで配信しオンラインでの参列を可能にしたサービスを開始。さらに近年、後継者がいない・維持が難しい・遠くて行くことができないなどの理由で、墓じまいなどのお墓にまつわる問題が増えていることを背景に、2023年1月より「ネット霊園風の霊」の開発を開始しました。その中で、今後更なる発展を遂げていくと予想されるメタバースに着目。

その後、コンペを経てHIKKYの提供するWebメタバースサービス「Vket Cloud」での開発を進めることに決定。2024年9月より、メタバース空間での供養を可能にした『メタバース霊園　風の霊』のサービスを開始しました。

今回はアルファクラブ武蔵野株式会社の小川誠取締役と、開発などを一緒に手掛けてきたHIKKY COOの喜田龍一に、風の霊のVket Cloud活用に関してお話を伺いました。

ーまず、風の霊の制作・開発にあたりVket Cloudの導入を決定いただいた理由を教えていただけますか？

小川取締役：当時の「ネット霊園風の霊」はアプリでのサービスだったので、アプリのインストールや立ち上がりにとても時間がかかってしまっていました。『メタバース霊園　風の霊』は故人様の知り合いの方などを招待するサービスであるので、そういった点で"Webブラウザですぐに起動できる”というのは1番のポイントでしたね。今までのHIKKYさんのメタバースという領域での実績や、我々のやろうとしていることやサービスに対する理解度の深さが1番だったというのも決め手でした。

ー理解度の深さというのは具体的にどういった点で感じていただけたのでしょうか？

小川取締役：最初は他の企業も入って進めていたのですが、HIKKYさんと直接進めるようになってからかなりスムーズに進行ができるようになったと感じています。葬儀や供養というのはHIKKYさんは初めての領域だったかと思いますが、その中でも十分理解をしに来てくれていると感じられたのが非常にやりやすかった点です。

喜田COO：自分が関わらせていただいたのは開発が始まって少し経ってからですが、当初はご指示いただいた内容をそのまま実装するという進行だったので、これはちょっと方向転換しないといけないなと。ビジョンはしっかりと練られていたのですが、それをどう具体的に落とし込むかという部分がふわっとしていたと感じ、このままの制作進行で本当にご満足いただける出来になるのかということを常に考えながら、再度ヒアリングをしつつ進めていきました。

小川さんの仰るように我々には馴染みのない分野ではありましたが、その分弊社的にもかなり勉強になりました。1番驚いたのはリリース日を仏滅の日にされたことですね。1番ダメな日だと思っていたので。そういった部分等も含め、アルファクラブ武蔵野さんからもたくさん教えていただきつつ、こちらの提案も積極的に聞いていただいて、結果良いものが作れたかなと思っています。

ー実際にVket Cloudを導入して良かった点などを教えていただけますか？

小川取締役：こういうパッケージですとガチガチに決まっているものではなく、我々の要望に合わせられるシステムであると感じました。非常に汎用性が高く、そういった点はとても良いと思います。

先程もお話にあった通りビジョンはしっかりしていたんですがコンセプトの部分を決めるのにはかなり時間がかかったので、その中でできることとできないことを明確に提示してくれて、やりたいこととできる部分をしっかりマッチしていただいたのも良かったです。

私自身今まで様々なプロジェクトに関わってきましたが、「できない」という回答は非常に少ないベンダーさんだったと感じます。

喜田COO：元々あるシステムの中に追加機能として何かをプラスするという形でなく、風の霊というサービス専用に色々な機能を積み上げていき、その一部の技術要素としてVket Cloudを採用したという形ですね。まさにそこを目指してVket Cloudは開発してきたので、その点をご評価いただいているのは嬉しいです。

ーサービスローンチ後、現時点で成果はどのように感じていますか？

小川取締役：まずは、おそらく日本初となるサービスをローンチできた、そしてその軌道を確認できているということが最大の成果ですね。

また、現在の少子高齢化という社会的問題を背景に「墓じまい」や「仏壇じまい」が社会的課題として注目される中でのローンチだったこともあり、本当に多くのメディアに取り上げていただけました。中国や韓国など海外のメディアからの取材もありましたし、ローンチから半年経った今でも問い合わせが多いです。

ー最後に今後の展望をお聞かせください。

小川取締役：この『メタバース霊園　風の霊』というサービスは、あくまで当社の将来的なビジョンの中の1つのフロントサービスです。2040年に多死社会がピークアウトを迎えるにあたって、いわゆる葬る儀式という葬儀から、想いを繋いでいく想儀へのシフトがコンセプトとしてあります。そしてこれから遺品の大半がデジタルになる時代に突入すると思います。その先にITでできることとして、デジタル遺品の日本最大のプラットフォーマーになり、その入口が風の霊になってくれれば良いなと考えています。それにあたってどういったデータを取り扱っていけるかなど、今後もHIKKYさんと一緒に議論を重ねながら、今年度はマネタイズに関する開発も進めていっていただきたいですね。

喜田COO：自分が本件に関わらせていただいて一番新鮮だなと感じたのがタイムスケールです。40年スパンの話が出てきた時点で、普通のIT開発の観点だけではダメだなと。小川さんの仰る通り、まずは短期的から中長期的なマネタイズ化から、そして今後数十年先を見据えて、デジタル遺品や死亡ログをDX化・ブロックチェーン化していくことを考えて、今後も一緒に開発を進めていければと思います。

ーありがとうございました！